A Jacket Well Worn: 園田努さん

A Jacket Well Worn: 園田努さん

今回お話を伺うのは、江ノ島の海辺の集落から生まれたバンド「maya ongaku」のヴォーカル/ギターとして活動する園田 努さん。

幼少期からものづくりへの探究心が強く、その独自の感性はデザインワークや文章にも広がっています。

園田さんとラベンハム、それぞれのクリエイティブにも焦点を当てながら、さまざまなお話を伺いました。

 

「maya ongaku」というバンドで活動されている園田さん。音楽の道を志したきっかけについて教えてください。

19、20歳の時の自分が考えていたことなんですが、僕らは視野の中で見えている世界以外の部分を、勝手に脳内でつくり上げながら生活してるんじゃないかと思ったんです。それって人間が創作することの根源的な部分であり、つまり人間は、創作することを前提に生活しているのではないかと。

誰もが自然に見えていない部分の世界をつくりながら、まるでそれが存在しているかのように生活している。それ自体がとてもクリエイティブだと思って、それを「maya」という曲にしました。

僕たちが普段見えていない部分を即興的に想像してつくっていくようなイメージで、即興に重きを置いた1時間くらいの演奏をしていたのですが、それがいつの間にかバンド名になりました。

そうした即興演奏を録音して、世界中の人が楽曲を公開できる音楽プラットフォームのアプリ、SoundCloudというアプリにアップしてみたんです。何曲かあげていくうちに、海外のレーベルから連絡がきました。その頃にはすでに音楽の道で進むことを漠然と考えていたので、そのレーベルに所属することになり、それが今の音楽活動に繋がっています。

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楽曲はどのような環境でつくることが多いですか。

家でつくることが一番多いです。1本だけギターを置いていて、それでつくっています。僕は無理やり曲をつくることができないので、例えるなら「トイレに行きたい」と思う感覚のように、体が自然と「何かつくりたい」と感じないと、つくらないようにしています。

音楽をつくることと歌詞を書くことは、それぞれ同じ感覚で向き合っていますか?

メロディーをつくるときは自然体の自分。歌詞はまた全然別物かもしれません。メロディーは言語にならない言葉でつくっていて、後からそこに日本語を置いていくのがすごく大変。

「今の僕では日本語に置き換えられない」と感じたら、ボツになることもあります。つくった音楽と自分の思考がぴったり対応することはほぼなくて、たまにあればラッキー。自分の思考がそこに追いついてなければ、到達するまで自分を育てなければいけない。そのために本を読んだりもします。音楽が先にできあがっていて、それに対応するものを世界中から探すような感覚です。どこかに転がっているんじゃないかって探しながら、「今なら詩にできそう」と思える瞬間を待つんです。

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絵を描く活動もされていますが、絵を描くときと音楽をつくるときの感覚は似ていますか?

それも全然違う自分です。音楽は自分の名前でバンドを通してやっているから、ある程度一貫性が必要。でも絵のほうでは何者でもないので、毎回全く違うアプローチができるんです。アクリルで絵を描いてみたり、フォトショップでデザインしてみたり。ライブなどのポスターもつくるんですが、毎回違うデザイナーに頼んでいるようなイメージで全然違うことをしてみたり。もしプロとして絵やデザインの仕事をしていたら、コンセプトも意識しないといけなかったり、きっとこんなに自由にできないと思います。

絵はずっと好きで、高校生くらいまでは将来、絵や芸術の方向でやっていくんだと思ってたんですが、途中で自分には無理だと気づく瞬間がありました。でも今こうしてジャケットを描いたり、MVで映像に関わったりできていて、音楽というプラットフォームがあれば全部できることに気が付いたんです。

結果的に自分の能力を全部使えていて、好きだったことをアウトプットできている。この環境だからこそ、気軽に自由に絵を楽しめていると思います。

音楽とデザインと、別の角度からアウトプットできるのはいいバランスですね。これから新たにやってみたいことはありますか?                           

今、音楽とデザインの割合は1:1くらいで、そのバランスがすごく気に入っています。でも文章を書くのも子供の頃から好きで、書くことももっとやってみたい。音楽、デザイン、文章が1:1:1になったら、もっといいだろうなと思っています。

文章で残すというのは責任を伴うのでやり方は模索中ですが、普段考えてることや思考のリソースみたいなものを、文章にできたらいいなと思っています。以前も雑誌の連載で音に関して書く機会があって、それがきっかけで「音楽をつくること」や「音を聴くこと」を、もっと哲学的に考えてみようと思うようになりました。普段考えていることを掘り下げたり、アカデミックな視点も混ぜたりして、書くなら面白いことを書きたい。その文章を読んで、みんなの音や音楽を聴く感覚をもっと拡張できたらいいなと考えています。

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【写真】昔からレコードを集めている園田さん。「店に並ぶ大量のレコードの中から厳選するため、1枚ずつ試聴するんですけど、1枚3秒くらいで判断できるようになりました。」

ツアーで海外に行く機会も多いかと思いますが、そうした経験は楽曲づくりの可能性を広げていると感じますか?

バンドメンバー3人で共通の景色を見る中で、一人一人違う視点があって、それは絶対に音楽にも活きていると思います。実は元々僕は旅が好きじゃなかったんです。ずっとなにかをつくっている方が楽しいと思っていたので、旅は自分に合わないと思っていて。でもツアーで毎年いろいろな国に行くようになって、旅の面白さがわかってきました。アメリカツアーの中に日記を書いていたのもすごくよくて。文章を書いたり、現地の音も録ったり、すぐにアウトプットできるから本当に楽しいです。

海外に行く時の必需品はありますか?

どこでも本が読めるように、Kindleは必ず持っていきます。本があると安心するんですよね。基本的に預け荷物はすべて楽器に使うので、機内持ち込み用のスーツケースひとつが自分の1ヶ月間の荷物。そうなると持って行く服も限られるので、だいたい決まってきます。このジーパンやトレーナーは必須で、そこにアウターを加えるんですが、このジレはツアーに持って行くにも最高。結局寒いのって胴体なので、ジレが1枚あれば十分な時期も長いし、内側にも着られるのでかなり重宝します。

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ラベンハムの「ブラック エディション ハイネック ジレ」を選んだ理由について、教えてください。

シンプルにかっこいいと思ったんです。自分がこれから着たいと思っていた服と一致した感覚があって。

昔は古着が好きで、それは大量生産への反発もありました。今、自分たちのツアーのためにつくったグッズを自分でもよく着ていて、それもそんな背景があって、あれこれ服を買わなくなりました。買うなら、洗練されていて、つくりがよくて快適で、ずっと着られるクラシックなものがいいなと思っていたから、「まさにこれじゃん」って。

色も面白いなと思いました。何色とも言えないような色が好きで、自分が持っている服とも相性がよさそうだなと。実際に着始めてみると、今の自分の生活にすごく合っていました。車でスタジオに行って、作業して帰ってくるだけなので、外に出る時間は一瞬。だからジレで十分で、移動中に着て、スタジオの中でも着たまま作業して、そのまま家でも着てる感じです。長袖のアウターだったらそれはしないと思います。あと、スタジオで録音する時に洋服がシャカシャカした素材だと音を拾ってしまうので、そういう面でもちょうどいい。

それと、実はずっと「半纏(はんてん)が欲しい」って思っていたんです。そしたらこのジレを見つけて、ちょっと半纏みたいだなと思って。“ネオ半纏”みたいな(笑)。実際にラベンハムで “HANTEN” もつくって欲しいです。きっとイギリスの人も好きですよね。

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このジレは、ラベンハムの中でも新たな領域を探る、実験的なライン「ブラック エディション」のもの。園田さんご自身も、音楽づくりでは実験的なアプローチを意識していますか?

歴史的に見ても、ロックは「更新する」ことに重きを置いてきた音楽なので、音楽をつくる上で実験は前提。自分たちが知る範囲の中で、聞いたことがないものを探しています。ただ、すべてを新しくするわけではなく、いろいろな要素をコラージュして、新しい形に変えていく。そうしてできあがった曲の中に、一滴レベルの新しいことがあればいい。逆に一滴でも新しいものが入ってなければ、いいとは思えないです。

実験的な創作をする上では、明確な答えや着地点が見えないこともあります。園田さんはどのように着地点を定めていますか?

もうこれ以上できることはない、と感じたら、それが終わりですね。締め切りまでやれることを全部やるっていう感じです。もし気に入らなかったら、何年後かに録り直したり、新しい曲の中で消化できればいいと思っています。追求し続けたいのに、締切で終わりにしなきゃいけない。そんなジレンマを抱えながらも、そのおかげで多くの人に聴いてもらえているんだと思うんです。

取捨選択というか、「ひとついいことがあれば、ひとつ悪いことがついてくる、みたいな感覚で捉えています。誰も聴いてくれないことが前提で音楽をつくっていたので、今は聴いてくれる人がいるだけで本当にありがたい。締め切りがあるのも求められているからこそなので、もはや嬉しいなと感じます。

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【写真】 1ヶ月ほど前から拠点としているスタジオ。ここでは音を録音したり、いろんな楽器で演奏を試したうえで音を配置したりといった作業を行うそう。

「ブラック エディション」は自由な表現に挑戦するラインですが、ブランドの歴史や伝統が持つ重みも同時に担っています。園田さんは、創作の中でそうしたものを感じることはありますか?

この前バリに旅行へ行った時に、現地の有名な作曲家に会いにいったんですが、そこで気づきがありました。ルーツがたどれないくらい長い歴史を持つ「ガムラン」というバリの民族楽器があるんですが、彼はそれを受け継いでいる家系の方で、音楽一家で育った人でした。

僕からすると、国のルーツとなる音楽を幼い頃からやっているなんて羨ましい。でも彼は、今は伝統的なガムランを一切弾かずに、ひたすら新しいことをやっているんです。なぜなのか気になって、インスタグラムから連絡したら家に迎え入れてくれて、4、5時間音楽について話しました。

「僕は日本の古典音楽を勉強してきたわけじゃないし、自分がやっているロックはまだ70年くらいしか歴史がないから、新しいものをつくることが当たり前だった。あなたは伝統的な音楽を学ぶことができたのに、なぜ完全に新しいことをしようとしているのか」。そんな質問をすると、彼は「それが唯一、古典に対するリスペクトだと気づいたから」と答えたんです。古典のやり方をそのままつなげていくことは、もはや彼の中でリスペクトではないと気付いたそうです。僕はそこで、ルーツへの向き合い方として、更新することは悪じゃなくて、リスペクトの形なんだと知ることができました。

伝統を重んじるような大学は、新しいことばかりする彼を目の敵にしているんですが、生徒たちは彼の元に音楽を勉強しに尋ねてくるそうです。伝統をそのまま残すことと、更新すること。未来に面白いことが起こるのは、やっぱり後者のような気がして。彼の言葉は、これから先も僕の中に残ると思います。

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アイデアや想像を膨らませるうえで、音楽の力は大きいもの。ラベンハムのクリエイティブディレクターも、そのシーズンのテーマに合う音楽を聴きながら、コレクションのアイデアを広げているそうです。そんな音楽をつくる立場である園田さんは、どのようにアイデアや想像をふくらませているのでしょうか。

きっと、アイデアを交換し合っているんじゃないかと思います。例えば、ファッションや文章からアイデアをもらうこともあるし、もちろんどちらが上ということもない。みんなでアイデアを循環させながらものづくりしていると考えたら、ちょっとかわいいですよね。

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園田 努

神奈川県出身。2021年、江ノ島の海辺の集落から生まれたバンド「maya ongaku」のヴォーカル/ギターを担当する音楽家。静かな熱を内包した音と言葉で、脳裏に潜む感覚をすくい上げるような楽曲を生み出している。フォークやアンビエント、サイケデリックの要素を横断する、有機的なサウンドが特徴。ソングライティングに加え、バンドに関わるビジュアル制作も手がける。

音、言葉、アートワークの側面から、「maya ongaku」の世界を立ち上げている。

INSTAGRAM: @sonodatsutomu

Writer : Moe Shibata
Photographer Takeshi Sasaki
Editor: Arisa Ogura

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