A Jacket Well Worn: 松本チアリさん

A Jacket Well Worn: 松本チアリさん

今回お話を伺うのは、金継ぎ師として、修繕をはじめ、金継ぎ教室の講師やワークショップの開催など、その魅力を広く伝える活動を行う松本 チアリさん。

 

“直して使い続ける”という美学は、リペアサービスを通して長く着続けてほしいと願うラベンハムの思想とも重なります。 

 

松本さんに、金継ぎ師のお仕事について、そして「直すこと」「使い続けること」の魅力について伺いました。

 

まずはこれまでの経緯を教えてください。

もともとは広告業界で働いていました。私が携わっていたのは映像広告で、日々求められるものや技術が変化していく中で、自分が携わっているものが100年後にも価値を持つのかを考えるようになりました。

常に新しい発想や技術に触れられる面白さを感じる一方で、少し寂しさを感じることもありました。そんなモヤモヤを抱える中で、コロナ禍をきっかけに自分を見つめ直した時に、昔から好きだった伝統工芸品に意識が向いたんです。

もともと家族みんな伝統工芸品が好きで、旅先でもその土地の器を買ったり、その土地ならではの手仕事に触れる機会が多く、日本の伝統的なものや職人さんに自然と憧れを持っていました。 業界やさまざまな伝統工芸について調べる中で、金継ぎ職人の道に挑戦することを決めました。まずは都内の金継ぎ工房で経験を積んで、3年前に独立しました。

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伝統工芸の中でも「金継ぎ」を選んだ理由はどんなところにありましたか?

伝統工芸の多くが「つくる」仕事であるのに対し、「なおす」仕事として出会ったのが金継ぎでした。そこが自分の中にあった“ものを長く使う”という価値観や、環境問題への関心とも重なったのと、新たな姿へ生まれ変わらせる美学や、作品そのものの美しさにも魅了されました。

先ほどお話しした「自分が携わるものが100年後にも価値を持つのか」というモヤモヤも、金継ぎなら解消できるような気がしました。金継ぎは室町時代から続いているもの。もしかしたら自分が直したものも、100年後に誰かの手に渡っているかもしれない。せっかく自分の時間や体、心を注ぐのなら、形として残っていくものに携わりたいという想いがありました。

実際にお仕事をする中で、どんな時に金継ぎの魅力を感じますか?

新しいものをつくる場合、そこからそのものの物語が始まっていくイメージがあります。でも金継ぎでお直しする器は、いうなればその器の人生だったり、持ち主の思い出が詰まっています。割れてしまったことで終わるはずだったものを、金継ぎによってつないでいく。それによって持ち主さんの気持ちに寄り添うことができるお仕事だと実感していて、喜んでくださるお客様の顔を見ると、このお仕事をしていて良かったなと思います。

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松本さんご自身も、長く使っているものは多いですか?

“一つのものを長く使う”という考え方は、私を含めた家族のもので、祖母から譲り受けた指輪もよく身につけていますし、両親が着ていた服をもらうこともよくあります。最近、自分が父のおさがりとして着ていた服を、30年ほど前の写真の中で父が着ているのを見つけたんです。それをみて「こうして受け継がれていくのはいいものだな」と改めて感じました。

例えばこのベストも父親からもらったもので、よく着てます。祖父母や両親から受け継ぐような昔のものって、すごくつくりがしっかりしていて、私が何年も着ても形が崩れないんです。新しいものを購入するときも、下の代へ受け継いでいけるような、できるだけつくりのしっかりしたものを選びたいと思っています。

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ラベンハムも、長く愛用してもらうことを前提としたものづくりをしています。ほつれや傷みが出てきた場合にもリペアサービスがあり、手をかけながら何十年も使い続けていただけます。 次の世代へとつないでいただけたら嬉しく思います。

リペアできると知っていれば、安心して買えますよね。器も同じで、「壊れても金継ぎがある」と思えば、気に入っているものでも安心して使えるし、買うときのハードルも下がる気がします。 私自身も金継ぎに出会ってから、大事な器を日常使いできるようになりました。 大切だからとあまり使わないというのはもったいないですし、壊れたら直すという選択肢があるのっていいことだなと感じます。

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【写真】松本さんのご自宅兼アトリエにも、家族から受け継がれているものがちらほら。
「この台は曽祖父が家具屋さんにオーダーしてつくったものだそうです。その後、祖父母の家にあり、それを私が受け継ぎました。このゴミ箱も、祖父が使っていたものです。」

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【写真】漆を乾かすための漆風呂として使っている棚は、古物店で見つけたもの。
「扉の開け方が変わっていて、もともとは茶器をしまう棚だったんじゃないかと聞きました。」

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【写真】器の割れや欠けも愛嬌。長く使うことで育つ味わいにこそ魅力を感じるという松本さん。
「独立した時に自分で買ったエプロンは、何年も使うことでどう育っていくのかを見たくて、あえて白を選びました。」

「コクーン ソーンハム」はどんなところを気に入っていますか?

まず色がとっても素敵で、お店に並んでいるのを見た時にこの子がキラリと光っていました。普段はアースカラーを選ぶことが多いんですが、このパープルは印象的なのに強すぎなくて合わせやすいし、自分がエイジングしていっても着られそうだなと。おばあちゃんになっても愛用できるかなと思いました。

このパープルはロイヤルパープルというのですが、イギリスの王室文化と結びついた格式のある紫で、イギリスでは馴染み深い色なんです。

そうなんですね!でも和の雰囲気ともすごく合う気がして、絶妙な色ですよね。色の他に、実際に着てみて感じたのは、ジレは金継ぎの作業に適しているということ。作業で汚れやすいのはやっぱり袖なので、ジレならそれも気にならないし、袖がないので手を動かす作業もスムーズです。それから、漆は暖かい環境で硬化しやすくなるので、すぐに固まらないよう肌寒いくらいの環境で作業することが多いんです。

ジレは軽くて暖かいので、そんな環境にもちょうどいいんです。もちろんお家やお出かけでも着ていて、春先は薄手のコートの下に仕込んで温度調節アイテムとして活躍しています。カーキのコートと合わせるのがお気に入りです。

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ラベンハムはイギリスに工場を持つファクトリーブランドで、つくり手を訪ねることは容易ではないかもしれませんが、アイテムの裏側に最終検品したい人のサインを入れています。丁寧なものづくりの背景や、つくり手の見えない時間の積み重ねのようなものが伝われば嬉しいです。

人の手やぬくもりを感じられるのはやっぱり嬉しいです。器の世界でも、ロイヤルコペンハーゲンはじめいくつかのメーカーは職人さんのサインが入っていたりして、そういう人の想いが感じられるものって、なんだか嬉しくなりますよね。

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「アンワディッド テイナム」はどんなシーンで活用されていますか?

出かける時のお供として使っていて、金継ぎのお教室に行く時にも着ています。中綿がない分とてもコンパクトになるのでバッグにも収納しやすくて、季節の変わり目にぴったりだと感じています。それに撥水性があるので、ちょっとの雨なら傘をささずにこれ1枚で歩いちゃいます。

襟が黒いのできちんと感もあって、カジュアルな印象になりすぎないところもお気に入りです。

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金継ぎをはじめて、新しく物を買うときの目線は変わりましたか?

職人さんがつくったものを直接買いたいという気持ちはより強くなりました。やっぱり人が好きなのでお話を聞いてみたいですし、完成形を見ただけじゃわからない想いの部分も知りたいと思うんです。それにやっぱり直接買ったものの方が、その時の思い出が鮮明に蘇ってくるので、思い入れも強くなりますよね。

最後に、これから新たに挑戦したいことはありますか?

お子さんにももっと金継ぎを伝えたいという思いがあって、実は絵本をつくりたいと考えています。実際に体験したことがなくても、金継ぎというものがあると知っているだけで、とても価値のあることだと思うんです。そのきっかけになればいいなと思っています。

お客さまとお話しする中でも、幼い頃から大切にしていたマグカップが割れてしまい、その時に金継ぎを知らなかったために手放してしまった、というお話を伺うことがあります。そうしたことが無くなるといいなと思っています。最近はお子さんが作った器をお預かりするケースも多く、割れて悲しんでいるお子さんに「金継ぎという方法があって、割れても直せるということを伝えたい」とご依頼くださる方も増えています。

私自身、金継ぎを始める前は、金継ぎに対して骨董の厳かな器を直すものという印象を持っていました。でも実際は日常の器を直すもので、日々の生活に深く根付いているものなんですよね。金継ぎがもっと当たり前の存在になって、「割れても金継ぎすればいいよね」というのが常識になればいいなと思います。お子さんでも「金継ぎしよう」と言えるような、そんな世界になったらいいですね。

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松本 チアリ

三重県出身。広告代理店での勤務を経て金継ぎ工房で経験を積み、2023年に独立。

現在は金継ぎの修理を手がけるほか、教室やワークショップの開催などを通して、その魅力を広く伝える活動にも力を注いでいる。

INSTAGRAM: @chiari.mtmt

Writer : Moe Shibata
Photographer:Takeshi Sasaki
Editor: Arisa Ogura

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