A Jacket Well Worn: 柳瀬菜摘さん

A Jacket Well Worn: 柳瀬菜摘さん

東京から埼玉県の小川町へ移住し、「PEOPLE(ピープル)」という喫茶を営む柳瀬 菜摘さん。

北海道で生まれ育ち、京都、東京、メルボルン、そして小川町と、ライフステージとともに拠点を変えながらその土地土地での暮らしを楽しんでいます。

今回は、暮らしとご自身の変化についてお話を伺いました。

 

まずは、柳瀬さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

大学卒業後、広告の制作会社でコピーライターとして働いていました。次第につくったものが消費される感覚やそのスピード感に違和感を覚えるようになり、もっとものづくりの源流から関わってみたいと思い、独自のものづくりをしているアパレルブランドに転職し、店舗販売、プレスアシスタント、グラフィックデザインなどの業務を経験しました。

ターニングポイントになったのは、29歳から1年間オーストラリアのメルボルンで暮らしたこと。コーヒーカルチャーが根付く街で、その現場に関わりたいと思い、カフェで働き始めました。料理の経験を積むこともできましたし、インハウスデザイナーとして販促物やwebなどのデザイン周りも任せてもらい、今もリモートで継続しています。帰国後、2019年に埼玉県小川町で喫茶「PEOPLE」をオープンしました。

Display Image
Display Image

小川町への移住を決めた理由を教えてください。

夫は東京出身で、自然のある場所に拠点を持ちたい、畑もやってみたいという思いがあり、東京からアクセスのよい範囲で移住先を探していました。そんな中、夫がたまたま小川町を訪れた際に現地の方とのつながりが生まれ、有機農業が盛んなことも知り、農業塾に通うようになりました。

通ううちにご縁が広がって「ここに拠点を持ちたい」という夫の想いも強くなり、喫茶「PEOPLE」をスタート。しばらくは東京との二拠点生活を送っていましたが、子どもの誕生をきっかけに2022年に移住しました。

有形文化財である石蔵を改装した喫茶「ピープル」。
この場所で喫茶を開くに至ったきっかけについて教えてください。

当時はこのエリアにお店も少なく、街の人が集える場をつくりたいと思っていた時に、この石蔵の取り壊しが検討されていると知り、これはご縁だなと。「人が集うならコーヒーもあったら嬉しいよね」「食べるものもあるといいね」と話すうちに、今のカフェのような形になりました。

Display Image
Display Image

【写真】PEOPLEが入る石蔵と隣の母屋は、どちらも築130年を超える有形文化財。かつては養蚕の技術伝承所や染工場として産業を支えていたそう。

隣の母屋には有機野菜の食堂やインドネシア雑貨店、ワイナリーの直売所が収まり、「ピープル」を含め、人と文化の交遊拠点としての役割を担っている。

「PEOPLE」という店名にはどんな意味が込められているのでしょう?

影響を受けるものって、本だったり映画だったり人それぞれだけど、私たちにとってはそれが“人”でした。「人が出会い、集まる場所には何かが生まれる」ということを互いに経験し、実感していたので、そんな場所になるようにと名付けました。

実際にここでは出版イベントやトークイベントを開催し、そこで新しいつながりや取り組みが生まれるきっかけにもなっています。店名に込めた思いが、少しずつ形になっているのを感じています。

Display Image
Display Image

【写真】程よい距離感を保ちながらも、繋がりを感じられる円形テーブル。「メルボルンでは、たまたま隣り合わせた人と会話が始まる光景がよくあって、そんな場になればと円形にしました」。

2階には小さな書店「BOTABOOKS(ボタブックス)」を併設。植物や自然に関わる新書や古書を中心に、柳瀬さんご夫婦がセレクトする本が並ぶ。

北海道出身、京都の大学へ進学し、東京で就職、そしてメルボルン、小川町。さまざまな土地での居住経験を持つ柳瀬さんにとって、住む場所における重要な要素はなんですか?

人や街、自然、アクセスなどの必要な要素がある中で、その時々の自分の状態やライフステージによって、その比重が変わる感覚です。20代で住んだ東京は「面白いことにアクセスできる速さ」、がむしゃらに働いた後に暮らしたメルボルンは「フレンドリーでリラックスできる人々」、そして子どもと暮らす小川町は「のどかな自然と東京との程よい距離感」。そんなふうに、大切にする要素の比重が変わってきました。

暮らす場所が変わることで、ご自身の変化はありましたか?

農家さんをはじめ、器や木製品、建物に至るまで、小川町にはものづくりをしている人が多く、生活に必要なものは案外、買わなくても自分でつくり出せるんだなと実感しました。お茶や梅干しも自分でつくるようになり、「まずはつくってみよう」という考え方に変わりました。

洋服の選び方も変わりました。アパレルブランドで働いていた頃は、衣食住の中なら“衣”が大事でした。それがメルボルンに行ったら、誰も人のことなんて気にしてない。日本人の友人が街を歩いていると、旅行中の日本人からは現地の人だと思われていたようで、後ろでファッションチェックをされていた、という話をしていました。それを聞いたオーストラリア人の友人が「Anyone can't judge you(誰もあなたをジャッジすべきではない)」と言っていて、その言葉が印象に残っています。

何を着ているかや何をしているかで人を評価すべきじゃない。自分も“もっと自由でいいんだ”と、ちょっとした解放感を感じました。そこからまた歳を重ねて、今は“心地よさ”をより重視するようになりました。

Display Image
Display Image

【写真】庭で採れた山椒は、毎年醤油漬けにしているそう。

洋服の選び方が変わっていく中、なぜアンワディッド コクーン ソーンハムを選んだのですか?

ラベンハムは20代の頃にもジャケットを愛用していて、ジレは持っていなかったので、新たな一着としてジレを迎えました。年齢を重ねて“心地よさ”をより大事にするようになったこともあり、サイズも20代のころは34を着ていましたが、今回はあえて38を選びました。

そして何よりこのコクーンシルエットが好きで、立体的なフォルムに惹かれました。

Display Image
Display Image

20代の時に愛用してくださっていたジャケットと、今も同じ工場でつくられています。元々ホースラグから始まったブランドで、この曲線的なキルティング柄は当時から採用されていたもの。伝統を守りながら、シルエットなどのディテールをアップデートしています。
お手持ちのアンワディッド コクーン ソーンハムは、裏地にメッシュ素材を重ねて風が通る隙間をつくっているので、夏場も肌離れがいいのが特徴です。

すごく軽くて快適です。後ろ姿がきれいなので、Tシャツ1枚で着るよりもなんだか嬉しくて。今日のような白Tシャツとジレのワンセットが定番化しそうです。

大きめのポケットがついていて、縦長だからものが落ちにくいのもありがたい。お庭で作業する時にもちょっとしたものを入れられるし、ボトムスにポケットがない日も助かります。

>>Unwadded Cocoon Thornham Womens / アンワディッド コクーン ソーンハム ウィメンズ

Display Image
Display Image

20代で最初にラベンハムを手にしたのは、どのようなきっかけだったのでしょう?

当時はアパレルブランドで働いていて、そのブランドが掲げていた「長く続く」という価値観が、自分のもの選びの基準にもなっていました。長く続くブランドには、それだけ愛される理由と信頼がある。そんな視点から、ラベンハムを手に取りました。

クラシックで上品な佇まいが一貫していて、着ていると少し背筋が伸びるような感覚が生まれる。そんなところにも惹かれました。

そして最近「リペアできる」ということを知り、久しぶりに新たなラベンハムを迎えるきっかけになりました。ビジネスとしては新しいものを多く購入してもらう方がきっといい。でもラベンハムはそうじゃないところを大事にしていて、その姿勢に共感したんです。

いいものをつくって、リペアによってより長く着てもらう。それがラベンハムが考える一番のサステナビリティの形なので、選ぶ理由に掲げていただけるのは嬉しいことです。

気に入って買ったものは長く着たいと思っているので、私自身、お直しに出したり、黄ばみが気になる洋服を染め直したり、自分でニットを繕うこともあります。リペアサービスがあることで、子どもと遊ぶ日もお店に立つ日も気にせず着られるのが心地よく、これからも長く愛用していきたいと思っています。

Display Image
Display Image

最後に、土地や年齢とともに変化するライフスタイルを楽しんでいる柳瀬さん。今後新たにやってみたいことはありますか?

“健やかに過ごす”ということの大切さを年々感じているので、それをもっと体験できる場所を作りたいです。

例えば今は、宿のような場もやってみたいと考えています。 食に加えて、マッサージや鍼灸など、さまざまな側面から“健やかに過ごす”ことを体験できるような空間をつくることが、ひとつの夢です。

Display Image

柳瀬 菜摘

北海道生まれ。料理家/デザイナー。 広告制作会社、アパレルブランドでの勤務を経て渡豪。
メルボルンの企業にてカフェ業務に携わりながら、インハウスデザインの経験を積む。
現在も同社のデザインやブランディングを担当しながら、2022年に埼玉県小川町へ移住。自然豊かな土地で、週末喫茶「PEOPLE」を営んでいる。

INSTAGRAM: @natsumitanaka_to

Display Image

【PEOPLE】

埼玉県小川町で週末にオープンする喫茶。 有形文化財に指定された築130年の石蔵を改装した店内で、地元の有機農家による旬の野菜や果実を使ったランチやスイーツが楽しめる。 

2階には書店「BOTABOOKS」を併設。 土地、食、本といったさまざまな切り口から、豊かな自然の魅力に触れられる。

〒355-0321 埼玉県比企郡小川町小川197 玉成舎の石蔵
営業時間:金曜日 11:00am ~ 15:00pm  / 18:00pm ~ -22:00pm , 土曜日 11:00am ~ -16:00pm

*営業日やイベントは、Instagramにて随時告知

INSTAGRAM: @people.jp

Writer : Moe Shibata
Photographer:Shotaro Suganuma
Editor: Arisa Ogura

関連記事

A Jacket Well Worn: 松本チアリさん

A Jacket Well Worn: 松本チアリさん

A Jacket Well Worn: 園田努さん

A Jacket Well Worn: 園田努さん

A Jacket Well Worn: 田代翔太さん

A Jacket Well Worn: 田代翔太さん