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今回お話を伺うのは、季節の花々を届ける移動式の植物スタジオ「桜山植物園」を主催する須田小百合さん。
神奈川県横須賀市の農園「SHO Farm」の一角で草花を育てながら、ポップアップショップやワークショップの開催、自由参加型の花栽培コミュニティの運営など、植物に関わる活動を広げています。
活動のこれまでやこれからについてお話しをお伺いしました。
まずはこれまでの経緯を教えてください。
大学卒業後、メーカーのEC部門で数年間働きました。その後、そこで身につけたWebデザインの知識を活かして、フリーランスのWebデザイナーとして活動を始めました。仕事内容は充実していましたが、気がついたら昼夜逆転のような生活になってしまって。長く続けられることを仕事にしたいと考えた時に浮かんだのが、幼少期から好きだった「植物」に関わることでした。小さい時から花や植物が好きで、お小遣いで買った苗を自宅の小さな庭で育てたりしていたんです。友人の紹介で出会ったフローリストの方に市場へ連れて行ってもらい、少しずつ知識を付けながら、「まずはやってみよう!」と活動を始めました。
SHO Farmさんの一角で花を育て始めたのは4年前です。鶏たちに手伝ってもらいながら土を耕すところからのスタートで、最初はうまくいかないことばかりでしたが、今年ようやく、初めて畑の花だけで花束をつくることができました。
お花や枝の定期便を行っておられますが、どういったきっかけで始めたのでしょう?
定期便という形はコロナ禍に始めました。誰もが、誰かに寄り添ってほしい時期でしたよね。
「それなら私が届けに行こう」と思い、契約者の方たちにお届けするようになりました。長く契約してくださってる方が多いので、「あのお客さんはこの色が好きかな」とか、人によって内容を少し変えることもあります。
活動を始めてから、お花ってどういう存在なのか、何ができるのかを改めて考えるようになりました。最近感じるのは、花は、どんな時にも寄り添える存在であるということ。例えば、大切な人を失った時、かける言葉が見つからなくても、お花を贈る(あるいは受け取る)ことで心がふっと和らぐ瞬間があります。時には、言葉以上のものを届けられる力があると感じています。
畑の植物を見ているとすごく納得できるんです。花が咲き誇る時期と、葉が落ちて静けさに包まれる時期が変わらず巡り、土の中では次の準備が淡々と進んでいく。その姿に触れると、悲しみもまた喜びへ向かうための時間として受け取れるようになりました。活動を重ねる中で、自分の中でもお花の概念が少しずつ広がってきています。
ご自身で花を育てようと思ったきっかけはありましたか?
お花の仕事を始めてすぐに、半年間イギリスに滞在しました。イギリスは毎週フラワーマーケットが開催されていたりと人と花との距離が近くて、花農家さんが軒先で花を売っていることもありました。その光景が自分にはとても新鮮で、「育てた花をそのまま届ける」というスタイルを自分もやりたいと思ったんです。
帰国後、自分のイメージを温めながら、栽培できる場所を探し始めました。友人の誘いをきっかけに訪れたSHO Farmさんで農業の永続性を考えた活動に共感し、相談したところ、「お花屋さんで自分で花を育てる人は聞いたことがないし、面白いからやってみたらどうですか?」と言ってくれました。
「桜山植物園」という名前にはどんな意味が込められているのでしょう?
花の栽培もしたいし、花屋もやりたいし、でも店舗を持っているわけでもなく、当初自分が何者なのかもわからなかったんです。でも海外の植物園のように、みんなが思い思いに時間を過ごせる空間のようなイメージはぼんやりとあって。そこに、私が育った土地の名前をつけました。実際にこうして当初頭に思い浮かべたような場所にいられるなんて、その時は想像していなかったです。
イメージしていた空間には近づきましたか?
好きに来て好きに帰って、植物を軸にいろんな方向から人が集まれる。思ってもいなかったルートでしたが、結果的にイメージしていたものにすごく近いものになりました。
いつもここで土を触って、芽が出て、花が咲いて、種をつけて……そういった自然のサイクルを見ているからこそ、極端に逆らうことはしない。そういう軸みたいなものが自分の中にも少しづつ育ってきた気がします。逆流を行くとか、逆風に立ち向かうのではなく、そこにあるものや出会いから広がって、自然と今の形になっていきました。「右に行ったらこんなものがあった」、「左に行ったらこんな出会いがあった」と、木の枝葉が自由に揺れながら風の流れで枝を広げていくイメージです。でもそのためには、根がしっかりしていないと台風で倒れてしまう。植物から在り方を気付かされることが多いです。
畑仕事をする時の服装は、どのように選んでいますか?
夏は風通しや乾きやすさ、涼しさが一番。冬は脱ぎ着して温度調節できるようにしています。
この長袖ジャケットは雨の時や寒い時に着ていて、夕方になると寒くなるので、重ね着できるものを探していたんです。袖がないものの方が作業しやすいと思っていたので、ラベンハムのジレがぴったりでした。
内側のタグに名前が書いてあるのに気が付いて、これは検品した方の名前なんですよね?私のジレは“ダナさん”。会ってみたくなりますね。こういうところがすごく素敵だと思います。つくってくれた人たちと繋がっている感じがしますよね。
この畑では、どんなふうにお花を育てているのでしょう?
こちらのファームでは雨水と太陽の光、自然の堆肥だけで野菜を育てています。そうやってできた野菜のおいしさを知っているからこそ、お花も同じように育ててみたいと思いました。
プラスチック製のものは使わずに、整備の時に出る竹を、支柱や竹炭に活用したり、刈った草をマルチに利用しています。時間が経てば土に還っていくので、毎年やることは多いですが、理屈だけではなく、物事の循環を体感できることが私の活動の源にもなっていると思います。
ラベンハムにも「地球環境を考慮した範囲内で活動しよう」という“Being Better”の考えがあります。現在もイギリスの小さな工場で生産を続けていますが、環境にいい素材に一気に切り替えようとすると無理が生じたり、既存の生地を廃棄することに繋がります。まずは今ある生地を使い切ることや、「生涯修理サービス」でリペアしながら長く愛用してもらうことなど、できることから一歩ずつ進めていくのが自然だと考えています。
「矛盾が生じる中でベターを選ぶ」というのはすごく共感します。すべてを完璧にするのは難しいけれど、自分にできる“いい選択”を少しずつ重ねていく。そのひとつひとつがきっと大きなパワーになると思います。私も全国のお花を市場で買わせていただいてます。自分で花を育ててみて、初めてわかる苦労や、課題があります。良い・悪いで測るのではなく、自分ができることから試しているような状況です。
無農薬で野菜や花を育てている方、菜食で料理をする方、森や里山の再生に取り組んでいる方など、今までの活動を通して繋がったご縁がたくさんありました。最近は海外にも出会いが広がって、ちょっとした奇跡もありました。まだ出会っていない人たちにも、出会いに行きたいなと思っています。
最後に、今後新たにやってみたいことはありますか?
育てた花だけで花束をつくるという一つのゴールが今年叶い、今はその花たちが作る景色に興味があります。時を重ねた空間がどうなっていくのか、どうやって手を入れていこうか考えるのが楽しいです。そして、もっと表現することにも挑戦したいと思うようになりました。
様々な分野の方達と、私一人ではできない空間づくりにも挑戦したくて、今まさに準備を始めています。お互いが大事にしていることをもっと知って、それぞれが深められるような活動ができたらと。これまでの出会いが、少しずつ育っていくといいなと思っています。
須田小百合
季節の花々を届ける移動式の植物園「桜山植物園」を主催。季節の草花を自宅や店舗に届ける定期便のほか、自由参加型の花栽培プロジェクト「Farm Garden」を通して、持続可能な花の栽培に取り組んでいる。近年は他ジャンルとの共創や、海外での活動も積極的に行い、植物がもたらすポジティブな循環をつくり続けている。
- https://sakurayama-shokubutsuen.com/
- INSTAGRAM: @sakurayama_shokubutsuen
SHO Farm
神奈川県横須賀市にある無農薬・無化学肥料で約100種類の野菜と果物を生産する農園。「千年続く農業」をテーマに、農業の永続性を考え、自然の仕組みやサイクルに基づいた栽培を実践している。
採れたての有機野菜を購入できるSHO Farmの直売所では、回収した新聞紙や瓶を活用し、廃棄物ゼロでの販売を実現しています。
https://sho-farm.sunnyday.jp
Writer : Moe Shibata
Photographer Shotaro Suganuma
Editor: Arisa Ogura