A Jacket Well Worn: 中友香さん

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__A Jacket Well Worn__

長く着込まれることを前提に、英国の自社工場で丁寧につくり上げられるジレやジャケット。
着るたびにその人に馴染み、その人らしい表情へ育っていきます。

なぜラベンハムを選び、愛用しているのか。それを尋ねると、その人の生き方が少しだけ見えてくる。
ライフワーク、そしてファッションという2つの視点から、様々な分野で活躍する人々のスタイルを紐解きます。

今回お話を伺ったのは、“書道”と“ファッション”を掛け合わせた活動で注目される書道家・中友香さん。
東京を拠点としながらも、作品制作は地元である大阪に構えたアトリエで行っているのだそう。
今回はそのアトリエを訪ね、中さんの活動の軸となる書道とファッションについて、お話を伺いました。

まずは書道家としてのお仕事について教えてください。

“暮らしの中で書道をもっと身近に感じてほしい”という想いを軸に、書道家として活動しています。書道に対して敷居が高いイメージをお持ちの方も多く、そこに違和感を感じていました。日本が誇る伝統的なものだからこそ、もっと身近に感じて欲しいと思っています。同じ世代をはじめ、幅広い世代の人々に書道をもっとカジュアルにとらえてもらい、暮らしの中のヒントや刺激にしてもらえたら、と考えています。

書道家を志すきっかけはありましたか?

元々は地元である大阪でブライダルのプランナーをしていましたが、書道と向き合っている時間が一番自分らしくいられると気づき、書道家を志すために上京しました。自分の「好き」を掛け合わせて新しいものを生み出したいという想いがあったので、好きだったファッション業界で販売のアルバイトをしながら、書道家を目指す日々を送っていました。書道とファッションって違うジャンルのようですが、自分の中では近しい部分を感じていて。ファッションで培った感覚を作品に落とし込むことで、より自分らしい表現ができると感じたんです。

また、組織に属しているとどうしても物事を動かすのに時間がかかります。私は自分のアイデアや挑戦したいことをすぐに行動に移すタイプなので、しっくりこない部分があって。それなら書道家として独立する道が一番だと感じました。自分の時間軸、スピード感で人生を楽しんでいきたいと思ったんです。

ファッションやブライダルでの経験は、その後の書道の活動にどんな影響を与えたと感じますか?

ブライダルのお仕事では、新郎新婦のおふたりの歴史やストーリーに寄り添った最善のご提案をすることを大切にしていて、書道のお仕事をご依頼いただく際にも、その姿勢はとても生きていると思います。色彩感覚や足し引きのバランスは、アパレルでの経験が生きています。

白い紙に黒の文字を入れる時に、“どう余白を残すか”という考え方をするんですが、足すばかりだとごちゃごちゃしてしまうので、いかに引き算をして自分のスタイルにまとめられるかが大切。ファッションの考え方と似ているんです。

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書を書く際は、最初に完成したイメージが頭の中にあるのでしょうか?

テーマに沿って作品を制作するケースもあれば、何も考えずに書いたものにエネルギーを感じるケースもあって、それぞれの作品にそれぞれのストーリーがあります。自分のエネルギーを最大限にぶつけた時に文字の枠を超えていく……というケースもあって、例えば「喜」という字が手を広げて喜んでいる姿に見えたり、「開」という字が何かの大きな扉が開かれる瞬間に見えたり。見る人の心境によっても変わるかもしれないですし、自分の解釈を超える作品に私は魅力を感じます。「あの時の感情に似てるな」とか、見る方がそれぞれの解釈で作品読み解きながら楽しんでもらえたら一番嬉しいです。

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たくさんの墨がありますが、どのような違いがあるのでしょう?

ここには日本や中国、台湾のもの、師匠の先生やプランナー時代のお客様からいただいたもの、骨董市で見つけたものなど、中にはかなり古いものもあります。墨にもそれぞれ個性がありますし、どんな水を使うか、どんな力で磨るかによっても変わってきます。荒々しい作品の場合は墨をガリガリ磨って粒子を粗くしたり、繊細な滲みを表現する作品はしっかり粒子を細かく磨ったり。

墨を磨るのにはけっこう時間がかかるのですが、その時間は精神を整えながら作品への気持ちを高めていくような、瞑想に近い感覚があります。墨のほかにもあらゆる要素が作品に関係していて、例えば“滲み”は日本の気候だからできるもので、海外で同じように表現するのは難しかったりします。その場所の気候の日の天気、墨の粒子の細かさ、力の加減、ひとつひとつが関わってくるので、同じ作品はできないんです。

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ラベンハムには、チャコールに近い黒「ランプブラック」と、昨年新たに生まれた真っ黒の「セーブルブラック」がありますが、中さんがふたつの黒から「セーブルブラック」を選んだ理由を教えてください。

まさに今お話した通り、自分のエネルギーを最大限発揮したい時には真っ黒の墨を使うので、「よし、やるぞ」と気持ちを引き締める時に着たいと思い、真っ黒の「セーブルブラック」を選びました。

墨がついても目立たないですし、もしついてもそれが味になると思います。書道作品ではゴールドも使うので、ゴールドがつくのもいい感じになりそうですよね。この古着のジャンプスーツも、元々着いていたペンキの汚れに墨の汚れが重なって自分らしく育っていているので、このジレもガシガシ着てもっと育てていきたいです。

先ほど書道は気候や天気にも影響されるとお話しましたが、石油ストーブを炊くと乾燥してきれいに滲みが出なくないので、冬は極寒の中作品に取り組むんです。なのであたたかくて腕が動かしやすいジレが活躍します。

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オフの日はどんなふうに着用されていますか?

大阪に帰る時はリフレッシュも兼ねているので、かっちりし過ぎないカジュアルなスタイルを楽しむことが多いです。今日もカジュアルにまとめていて、ブルーのワントーンでジャンルレスに仕上げてみました。

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自分らしさを表現できるファッションと書道。ふたつを掛け合わせて、今後どのように活動を広げていきたいですか?

ファッションと組み合わせることで、書が少しずつ人々の暮らしに寄り添えるようになってきたのを実感しています。たとえば、書をデザインに取り入れたファッション小物や洋服といった日常に溶け込むアートピースを制作したり、ファッションブランドのイベントでワークショップを開催したりと、さまざまな形で書の魅力を伝える機会が増えました。こうした活動を通じて、書をより身近に、そして新たな視点で感じていただけるよう心がけています。今後は海外での活動にも力を入れたいと思っていて、書道がアートと同じように、暮らしに寄り添い、日々を豊かにする存在になれたらと願っています。

ブライダルプランナー時代はとにかくお客様優先で、自分の時間を削って働いていました。当時私はそれが楽しかったので、上司から「もっと自分を大切にしなきゃ」と言われてもあまり意味がわからなくて。でも今になってその意味を実感していて自分のペースで自分らしく作品づくりに向き合えること、それをみなさんに楽しんでもらえることがとても幸せです。自分を大切にすることが、周りを大切にすることにも繋がるのだと実感しています。

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中 友香

大阪府出身の書道家。ウエディングプランナーとしてのキャリアを経て、幼い頃から親しんできた書道の道を志すために拠点を東京へ。アパレル販売を通じてファッションの視点を磨きながら自分らしい表現を追求し、現在はアトリエを構える大阪と東京を行き来しながら書道の魅力を発信中。“書道”と“ファッション”を掛け合わせた独自のスタイルの活動が、幅広い世代に注目されている。

INSTAGRAM: @naka.tomoka

Writer : Moe Shibata
Photographer :Shoko Hara
Editor: Arisa Ogura

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