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嵐電の線路沿いの小路にひっそりと佇みながら、唯一無二の存在感を放つカフェ「ACTUAL KYOTO」。築130年の古民家をリノベーションした建物は街並みに溶け込み、偶然見つけるのは難しい場所にあるにも関わらず、連日多くの人がこのカフェを目指して訪れています。
今回は、奥様の真由美さんとともに「ACTUAL KYOTO」を営む北浦宏平さんにお話を伺いました。
まずは北浦さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
元々教員になるつもりで教員免許を取得して、いい先生になるために広く経験を積もうということで、約1年半で32カ国を旅しました。その後、海外生活の経験と英語の勉強を兼ねて1年ほどオーストラリアに滞在していました。そこで出会った妻とともにパースという街の小さなカフェで働き出したのが、バリスタとしてのキャリアのはじまりです。
僕が働いていたカフェでは、常連さんひとりひとりの名前はもちろんコーヒーの飲み方や好みまで覚えていて、お客さんも喜んでくれて。毎日お昼時になるとイタリア人のお客さんがエスプレッソを1杯飲みに来て仕事に戻ったり、週末には決まってオージーファミリーがビッグブレーキー(朝ごはん)を家族揃って食べに来たり、本当に小さな店でしたが、街の人に必要とされる存在だったんです。そんなカフェの“存在価値”に強く惹かれて、帰国後は京都のカフェでキャリアを積んだ後、独立してこの「ACTUAL KYOTO」をオープンしました。
築130年の古民家を改装されているとのことですが、古民家を活用するアイデアは当初よりあったのですか?
はじめから決めていたわけではないのですが、見た瞬間になぜかすごく惹かれて、ここでカフェができたら
面白いんじゃないかなと思ったんです。見つけにくい立地ですが、わざわざここを目的に来てくれるような
場所の方がいいと思っていました。自分たちが本当にいいと思うものを提供して、来てくださった方々を
大切にしていけば、この場所でもお客さんは来てくれるという想いがあったんです。
リノベーション面では、ただきれいにするのではなく“どうクリエイティブを入れるか”ということを意識
しました。例えばこの土壁も元々ひどい状態で、板に張り替えるのが一番コストも安くてきれいになります。
でもどうせなら今ある素材を生かそうということで、土壁と相性のいい岩絵の具という日本画材を使って一面をグラフィティアートにしました。携わってくれたアーティストの方々ともアイディアを出し合って、この古民家が持つ歴史を生かす形で引き継いています。予定より3か月ほど遅れての開店になりましたが、細部までこだわりきった状態でオープンできました。
「ACTUAL KYOTO」という店名にはどんな意味が込められているのでしょう?
今まで自分がいろいろな国を訪ねて、実際にその場所で現地の人と交流して“実体験”というところに幸せを感じてきたので、このお店でも“実体験”としての価値を提供したくて「ACTUAL KYOTO」と名付けたんです。
オープンして2年経って、この細い路地に入るのを楽しみに来てくれたり、目の前を嵐電が走るのを面白がってくれたり、築130年という歴史をコーヒーを飲みながら感じてくれたり……自分が伝えたかったことを感じてくれる人がたくさんいることを実感しています。店名のロゴも知らないと読めないようなデザインですが、見つけにくい場所でも、店名が読めなくても、やるべきことをやっていけばここを目指して人は来てくれる。その信念に立ち帰れるよう、想いを込めています。
ユニフォームはどんなアイデアでつくられたのでしょう?
この空間でコーヒーを飲むときに、コーヒーの味はもちろん、空間や店員の仕草、ユニフォームも、全部がこの一杯に影響を与えると思うんです。ユニフォームも常にしっかりしたものを身につけたいという想いがあったので、仕立て屋さんと相談しながら自分たちでデザインしました。僕は着るもので気分が上がるタイプなので、これを着るとスイッチが入りますね。
普段も服を選ぶ時に“自分の気分を上げる”ということは意識されますか?
気分が上がることと、子供がまだ小さいので動きやすさを重視しています。ラベンハムのジレは気分を上げてくれるもののひとつで、例えばTシャツに1枚羽織るだけで気持ちが引き締まります。
寒くなった時のためにバッグにもう1枚持ち歩きたい時にも、シャツだとバッグの中でくしゃくしゃになるけどこのジレはそれも気になりませんし、暑すぎず寒すぎずという微妙な温度調整ができるのがいいですね。お店のユニフォームとも相性がいいので、冬はインナーとしても忍ばせられます。
ラベンハムのジレはどんなシーンで着用していますか?
普段、仕事とプライベートや旅行などで着るものをあまり分けていなくて、その分気に入ったものをずっと着ていたいタイプなんです。このジレはどんな服装やシーンにも合うので重宝しています。
旅行が好きな僕としては、ポケットが多いのもありがたくて。特に内ポケットって斜めのものも多いですが、これはちゃんと90度についているので大事なものを入れてもまず落ちる心配がないですよね。ラバンハムはこだわりのあるものづくりを続ける歴史あるブランドなので、安心して長く着られると思っています。この建物もそうですが、やはり歴史のあるものには惹かれます。
ラベンハムは、“長く使う”に加えて、新たに“使い切る”というコンセプトにも力を入れています。
ウールの産地であるイギリスの自社工場で、生地からこだわって製造していますが、どうしても製造過程で余る生地が出てしまいます。そういった過去のコレクションの“端切れ”を活用して、好きな生地やパーツを組み合わせた自分だけの1着をつくる「カスタムジレプロジェクト」という取り組みもしています。
“使い切る”ってすごくいいですね。生地をつくってくれた人への想いもありますよね。“使い切る”というコンセプトは我々も持っていて、まさに外のテラスの壁がそうです。コーヒー豆というのは、コーヒーチェリーという果実の皮や実を取り除いた種の部分なんですが、その周りの皮や実は捨てられてしまうんです。それを乾燥させたお茶があって、すごく美味しいし生産国の方への還元にもなるので、設計者や職人さんたちとそのお茶を味わって。その後それをもう1度乾燥させて、塗り壁の素材に入れているんです。ボコボコしてたり、ちょっと色の濃いところがそうです。
古民家って京都の財産だと思うんです。長く京都に住んで、古い町屋がどんどん新しい建物に変わっていく未来はどうなのかなって思っていて。古民家は不便なところも多いし、合理的ではないと思うんです。でもそれを活用することで、京都の未来が変わるんじゃないかなと思うんです。まずは自分たちが実践して、古民家を再利用しながらお店を続けていくことで、僕たちみたいな選択をする人が少しでも増えたらいいなと思っています。
最後に、北浦さんご自身もこれまで多くの旅をされてきましたが、旅先のカフェとして「ACTUAL KYOTO」を訪れるお客さんには、どんな時間を過ごしてほしいですか?
自分たちも、旅先の飲食店で現地の人と交流しながらたくさんのパワーをもらったので、そのパワーをここで返したいなと思っています。旅行中に飲食店に入る回数は限られるので、そのお店でどんな接客を受けるかって、その土地の印象にかなり影響すると思うんです。本当に微力ですが、「日本、京都にまた来たい」と思える体験を提供できるように心がけて接客しています。ここで何かしらの刺激を受けて、また日常を頑張れたり、なにかヒントを得たり……ほんの少しでもその人に影響を与えられたら嬉しいです。
「このお店を目指して京都へ行く」という存在になれたらいいなと思ってやってきて、実際に「ずっとインスタを見ていて、来てみたかった」と言ってくれたアメリカからのお客さんや、京都に来るたびにこの店に帰ってきてくれるお客さんが各国にいらっしゃって、距離は遠くてもちょっとした常連さんというか……そんな存在が世界のあちこちにいるのは、すごく幸せだなと思います。
“人と深く関わる”って教師じゃないとできないことだと勝手に思い込んでいたんですけど、それって今このお店を通して実現できてるんだな、と日々実感していて。職業はあまり関係ないんだなと、今は思いますね。
北浦 宏平
京都バックパッカーとして30カ国以上を旅した後、オーストラリアのカフェでバリスタとしてのキャリアをスタート。帰国後は京都を代表する人気カフェで経営の経験を積み、2023年4月、妻の真由美さんとともに京都の四条大宮に「ACTUAL KYOTO」をオープン。旅での体験や、オーストラリアで感じたカフェの存在意義など、自身の経験をもとに“実体験”から得られる価値を提案している。
INSTAGRAM: @actual_kyoto
ACTUAL KYOTO
〒604-8811
京都府京都市中京区壬生賀陽御所町20−2
営業時間:10:00am-18:00pm
定休日:火曜日
INSTAGRAM: @actual_kyoto
Writer: Moe Shibata
Photographer: Shoko Hara
Editor: Arisa Ogura